コラム「組織の成長加速法」-第241回 5年で1.8倍 42億──社員が前向きに動き出す組織はこうして創られる
成長は“意図して創れる”——あの日の面談から始まった物語
先日、6年間ご支援させていただいている企業の社長から、こんな言葉をいただきました。
「木村先生、あの日のことを今でも覚えていますよ。品川のホテルのラウンジで、“成長は意図して創れる”とお聞きしたとき、正直ちょっと衝撃でした。」
そこから始まった取り組みが、今では売上42億円突破。社員数も1.4倍の74名、業界でも“急成長企業”として名前が挙がるほどになりました。
実は、初回面談のころは典型的なトップダウン型。社長が全部判断し、社員は動かされる側。
しかし、「社員が前向きに成長する組織をつくりたいんです」という社長の決意が、企業の運命を変えました。
私はその変化を6年間、最前線で見てきましたが、この成長は偶然ではありません。
意図して創った結果 なのです。
なぜ同じ業界で、ここまで差が出るのか?
多くの企業で、似たような悩みを耳にします。
「社員が自分で考えない」「若手が育たない」「採用してもすぐ辞めてしまう」──経営者なら、胸が痛むほど“あるある”の話です。
特に競合他社では、定着率が悪く、採用しても半年でいなくなる。戦力化どころか常に人手不足。結果として業績は足踏み状態…。
これ、実は“組織そのもののクセ”が原因です。
一方で、この会社は業界ではタブーと言われる新卒採用で大成功。なぜか?
若手が「育つ仕組み」と「前向きに動く空気」を、意図して創り込んだからです。
同じ業界で同じ環境で、ここまで結果が分かれるのはなぜなのか?
その理由を深掘りしていきます。
「仕組みを入れれば育つ」——その認識こそが成長を止める
成長が止まっている企業の共通点は、「仕組みさえ入れれば人が勝手に育つ」という誤解にあります。
人事制度、評価制度、研修…。もちろんどれも必要ですが、それ自体は“ただの器”に過ぎません。
もう一つよくある誤解が、「経験を積めば課題解決力は勝手に上がる」というもの。
残念ですが、これは幻想です。
経験値だけでは、課題解決力はほとんど上がりません。むしろ、間違ったやり方が習慣化され、問題が深刻化するケースすらあります。
この会社が大きく成長できた背景には、“我流マネジメント”からの完全脱却 がありました。
社長・役員・管理職、3人以上部下を持つ人は全員、マネジメント技術を再学習。
この“誤解のリセット”が、組織変革の第一歩だったのです。
鍵は「課題解決力の分散」と「前向きな振る舞い」の設計
では、本質は何か?
それは「課題解決力の分散化」と 「振る舞い(向き合い方)の改善」 の2つです。
課題解決力が社長に集中する組織では、どれだけ頑張っても限界がきます。
社長の限界=会社の限界。
これを破る唯一の方法は、課題解決力を組織全体に分散すること。
そして、マネジメント技術の核心は“対話”です。
上司と部下の対話そのものが課題解決のフレームになっており、対話を重ねるほど部下は自然と「考えて動ける人材」に育ちます。
さらに忘れてはならないのが、「前向きにやる」という振る舞い。
しぶしぶやる組織からは創意工夫は生まれません。
前向きに取り組む“空気”を意図的に作り、改善行動をやり切る文化を根付かせる。
これこそが、成長企業が必ず持っている共通点なのです。
改善行動を“やり切る仕組み”が成長を生み続ける
この会社では、上司と部下の対話を通じて「改善行動の徹底」が日常化しています。
決めたゴールに対して、改善行動を積み重ねる。
その“小さな成功”が連続的に生まれる仕組みになっているからこそ、5年で1.8倍という結果につながりました。
成長は偶然ではありません。
意図して創るものです。
そして、その第一歩は「我流を捨てる」ことから始まります。
では、御社はどうでしょうか?
・課題解決力は分散していますか?
・前向きに取り組む空気はありますか?
・改善行動は“やり切る文化”として根づいていますか?
ぜひ一度、足元を点検してみてください。
組織は変えると決めて取りかかれば、必ず変わります。